衝撃の十人十色 仕事中にそんな事考えたら萎えるよね。
今日は朝から興味深い一日だった。
昼の仕事で、50代くらいのご夫婦がご来店された。
奥様が少し恥ずかしそうに、でも真剣な表情で私に相談を持ちかけてきた。
「あの、店長さん」
「はい、何でしょうか」
「夫婦の、その、夜の生活で、感度を高めるような食事やサプリメントってありますか?」
ご主人は少し離れたところで待っていらしたが、時々こちらを気にかけている様子だった。
きっと二人で相談して、奥様が代表で聞きに来られたのだろう。
薬機法の関係で、効果効能については慎重に答える必要がある。
でも、一般的な栄養素の働きについてなら説明できる。
「血流改善という意味では、アルギニンやシトルリンといったアミノ酸が注目されています」
「これらはスイカや大豆、ナッツ類に含まれています」
「亜鉛も大切ですね。牡蠣や赤身肉、カボチャの種などに豊富です」
奥様は真剣にメモを取りながら聞いてくださった。
「ビタミンEは血行促進に関わりますし、ビタミンB群は疲労回復に役立ちます」
「ただ、最も大切なのは」
私は少し声を落とした。
「精神的な繋がりかもしれません」
「リラックスできる環境や、お互いを思いやる気持ち、コミュニケーション」
「それらがあってこそ、栄養素も生きてくると思います」
奥様の表情がパッと明るくなった。
「そうですね。主人とちゃんと話し合ってみます」
「ありがとうございました」
ご主人と合流して、二人で商品を選んでいる姿を見ていると、
なんだかとても美しいものを見ているような気持ちになった。
長年連れ添った夫婦が、お互いをもっと大切にしたいと思って、
こうして一緒に努力している。
素晴らしいことだ。
そんな午後の清らかな気持ちを胸に、夜の現場に向かった。
今日の撮影は、事前の打ち合わせで「夫婦もの」と聞いていた。
昼間の出来事もあって、きっと愛に満ちた作品になるんだろうなと思っていた。
ところが。
現場に着いて台本を見た瞬間、目を疑った。
NTRもの。
いわゆる寝取られもの。
なんでしょう、この振り幅。
左を向いていて、思いっきり右に首を「グン!」って振ったかのような衝撃。
昼間は、夫婦の愛を深めるお手伝いをしていたのに、
夜は、その真逆のシチュエーション。
まさか旦那様の目の前で、こーんなことをするなんて。
でも、これも仕事だ。
撮影が始まると、プロとして集中しなければならない。
女優さんは演技とはいえ、全力で役に取り組んでいる。
旦那役の男優さんも、複雑な感情を表現している。
私は私の役割を、しっかりと果たさなければならない。
ただ、撮影の途中で、ふと考えてしまった。
愛の形って、本当に人それぞれなんだな。
昼間の夫婦は、お互いを思いやって、より深い関係を築こうとしている。
この作品の設定では、複雑で屈折した形の愛が描かれている。
どちらも、ある意味では「愛」なのかもしれない。
普通なんて、ないんだ。
隣同士、同じ色になってはならない。
あれ?
これって、数学の何かの方程式で言うんだっけ?
グラフ理論?
四色定理?
なーんて考えてたら、一瞬、気が散ってしまった。
これはまずい。
女優さんにも、旦那役の男優さんにも失礼にあたる。
みんな真剣に演技をしているのに、私一人だけ数学のことを考えているなんて。
ここはプロとして、マッスルコネクション発動。
体の奥底から力を集中させて、しっかりと役割を果たした。
無事、今日も撮影終了。
帰り道、また考えた。
昼も夜も、それぞれ違う形の「愛」に関わった一日だった。
ドラッグストアのご夫婦の、お互いを大切に思う純粋な愛。
撮影現場の、複雑で屈折した愛の表現。
どちらも、人間の感情の一部分なんだろう。
私は、両方を見る立場にある。
どちらに対しても、誠実でいなければならない。
今、布団の中でこれを書いている。
明日は店長として、棚卸しの準備がある。
商品の在庫確認、発注リストの作成、スタッフへの指示。
昼の仕事に必要な、現実的な作業がたくさん待っている。
でも、今日一日を振り返って思うのは、
どんな形であれ、人と人との繋がりに関わる仕事って、
深いものだということ。
ご夫婦の相談に乗るのも、
撮影で演技をするのも、
根本的には、人間の感情に寄り添う仕事なんだ。
明日もまた、それぞれの現場で、
それぞれの「愛」に出会うんだろう。
そんなことを考えながら、今夜は眠りにつこう。
おやすみなさい。